LOSTAGE - LOSTAGE

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 奈良を拠点に活動するバンドの四枚目。元は四人組でメジャーデビューもしていたらしいけど、僕はスリーピースになって且つ自主レーベルを作って活動しだした本作で知った。

 上にも書いた通り本作はメンバーの脱退やメジャーレーベルからの離反を経て作られた節目感の強いアルバムで、真っ白なジャケットに四枚目にして初のセルフタイトルというあからさまな仕切り直し具合は外野が騒いでいただけでなく、何よりも当の本人達にそういった感慨があったことを滲ませる。

 この作品でロストエイジの威力に魅せられた僕は遡って過去のアルバムを手に入れたり、またこれ以降のアルバムも聴いているわけだけど、このアルバムで知ったという初聞きのインパクトを別にしてもやはり本作が現時点での最高傑作だと思う。

 捨て曲は無いが、特に最初の2曲の流れが凄い。文字通りかきむしる様なギターで始まる一曲目「ひとり」は、新しい状況下での心機一転や再生を誓うというよりも、むしろもう何もかもどうにでもなれ!といわんばかりの逆ギレのようなむき出しさが物凄く清々しい。ここには、安易なネガティブも馴れ馴れしいポジティブもどちらも等しく薙ぎ倒すような、非常に原理的なロックの快感が渦巻いている。また、そこから続く二曲目「断層」は一転してとても抑制された調子で始まるが、その空気感は逆ギレの一曲目から比べて落ち着いたと言えるものではなく、むしろ濃密な不穏で、これほどの緊張感がパックされているスタジオ録音はそうそうお目にかかれるものではない。(余談だが僕はこの二曲目が特に好きで、中でも「俺たちは 戦争だと思い込んだ」「あいつを殺すために/許すために」という歌詞の部分を初めて聴いた時は、久し振りに凄いバンドを発見したと思ったものだ )

 バンドのサウンド自体はオルタナや90年代USインディー、ハードコアパンクなどを踏襲した非常にストレートなものなのだけど、BaVoである五味岳久の甲高い声と、更に彼の書くいなたいが妙に心を捉える、まるで労働者階級出身の作家が書く純文学みたいな歌詞がそれに合わさると結果として何とも言えない、独特の泥臭い黄昏を出現させており、それがこのバンドの独創性の源泉だと思う。中でも本作は特にそういった要素が顕著だ。

 かつてまだロックが追い詰められた敗者の、或いは少数派の弱者の、最後にして唯一のカウンターだった頃の捨て身の切実さみたいなものが色濃く匂う、数少ない現役バンドだと思う。

 あと、今時レコードを積極的に作ってくれているのも嬉しい。欧米なんかはあんまり有名ではないインディーバンドでも大体レコード出すのだけど、日本でアナログをリリースしているのは本当に珍しい。勿論、利益も殆どでていないと思う。ロストエイジとあとはオーガ・ユー・アスホールくらいではないか。ザゼンとかクリプト・シティも作ってたかな。

 下のPVは、ダンサーの人も相当格好よいです。


LOSTAGE『ひとり』 PV - YouTube