SOMEWHERE - ソフィア・コッポラ監督

f:id:when87:20140125222257j:plain

最近「ブリング・リング」が公開されているソフィア・コッポラの前作。
本作前のマリー・アントワネットが割と派手派手な絵面だった反動かどうかは知らないが、本作はとてもミニマルで静謐な作り。ホテルの室内で主人公がただ座っているのを固定カメラから1カット長回しでじっくり撮り、BGMも基本的には無し。でも環境音はカットしていないという様な場面が多い。あとは、車での移動シーンも多く、また主人公は様々な女性と遊ぶが空しさだけが募るという点で、ギャロのブラウン・バニーにも通ずるサラリとした空虚がある。というか今書いてて思ったが、オープニングの「同じ所を車で回る」シーンなんかまんまだ。二人の才能ある監督が、内容自体は全く違うもののどこかしら同じ様な虚無を孕んだ作品の、その冒頭の絵がとても似ているというのは何やら面白いなと思う。
 「自堕落な生活を送る離婚した父親が久し振りに娘と過ごす事になり、それを契機に自分を見つめ直す」というプロットそのものは主人公がハリウッドスターという設定を除けば、割とありふれたものなのかもしれないが、それをあの巨匠フランシスを父に持つソフィアが撮っているというのは単に皮肉が効いている、という以上に切実なものを感じる。本作の主人公ジョニーにはやはり、ソフィア自身の父親像や願望が多く投影されているのだろう。
 全体的に退屈とも言える淡々とした描写が続くが、役者達のうまさとソフィア一流のセンスある画作りのおかげで飽きずに見れる。毎度の事ながら、本当にどのシーンも絵になる。又、ジョニーの元?妻、娘の三者の過去・現在の関係もはっきりとは描かれないのでその辺を会話や行間から汲み取ろう、というか漏らすまいと思って見ていると結構自然と集中してしまう。この辺の設定のぼかし具合も絶妙。
 あとソフィアの作品には欠かせないミューズだが、今作ではダコタの妹、エル・ファニング。その雰囲気というか透明感というか、本当に妖精としか思えない可愛らしさ。特に室内でバレエを踊るシーンと水中で笑うシーンは強烈。ヒロインであり一番のキーパーソンであるという以上に、基本的に淡々とした本作を彩る華として十二分の存在感を放つ。しかしwiiとかバレエのシーンはあれ演技というよりは素に近いのだと思うが、どうなのだろうか。あれがもしもカッチリした演出下でのザ・演技なのだとしたら、ガラスの仮面よろしく「おそろしい子、、、!」だと思う。
富も名誉も手にし、男前でモテて、離婚はしているものの定期的に会える可愛い娘がいて。それでも寂しさは手を変え品を変え、募る人には募るのだというお話。傑作。

フランシス・コッポラはこれを見てどう思ったのだろうか。軽い復讐だと、とれない事もないけど。


映画 『SOMEWHERE』 予告編 - YouTube