キャリー(1976) - ブライアン・デ・パルマ監督

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※以下、ネタバレしています。

スティーブン・キング原作。本作は初めて観た時、冒頭30分こそやや失敗したかなと思ったものの、トミーがキャリーを初めて誘う当たりから俄然引き込まれて、終わってみれば流石の傑作だった。烏とロバの合いの子の様なキャリーシシー・スペイセクが、自分に自信を持ってどんどん可愛くなって様は正に映画のマジックが宿っていて見ているこちらまで嬉しくなるような感じだった。但しそれはクライマックスの前ふりでもあるわけで、本作ではその前ふりがとても良くできているだけに、キャリーの心情の落差を思うと本当に胸が痛い。

学校では苛められ、家庭では狂信者たる母親から虐待されいてるキャリーに、やっと与えられた幾筋かの光。それは庇ってくれる体育の先生(大人としての理解者)であったり、キャリーを苛めた事を反省し自分のボーイフレンドをプロムの晩にキャリーに斡旋するスーであったり(同世代の同性としての理解者)、最初はガールフレンドに言われて嫌々ながらも、徐々に本当にキャリーに惹かれていくトミーであったり(同年代の異性としての理解者)。それらに祝福されながら、プロムのステージを昇るキャリー。しかし、直後天井から降ってくるたった一人の悪意によって、ようやく掴んだ彼女の光は反転する。「こんなにうまくいっていいのか、本当は皆で私をからかっているのではないか」という疑心の導火線は瞬く間に燃え上がり、それは彼女の超能力という形を取って爆発、文字通りプロムを地獄と化す。その力先生もトミーも殺し、また帰り着いた自宅にて、今度は母をも殺し、結局その母と共に瓦礫の下敷きとなるキャリー。唯一生き残ったスーでさえ、の悪夢でなかば頭がおかしくなってしまっている、という所で映画は幕を閉じる。

しかし思春期のような腫れ物精神の時にましてあの状況で罠を仕掛けられ「あぁ、自分はやっぱり最初から、全員に嵌められていたのだ」と全てを呪ってしまった彼女を誰が責める事ができるだろう。その上帰り着いた自宅で歪んでいるとは言え最後の糸であった母親から文字通り刃を突き付けられた彼女の心情を思うと、もうひたすらに切ない。

見る前は単なるB級ホラーだと思っていた本作だが見終わってみると、超能力などのオカルト要素はあくまで味付けに過ぎず、一人の少女の悲劇的な青春を、繊細な手つきで表現した傑作しかし本当に、お世辞にも美人とは言えないキャリーが物語の進行と共にどんどん可愛く見えてくるのが一番印象に残った。

キャリーの家の美術や、冒頭の更衣室やプロムでの血まみれキャリー+炎など、美しい画作りも随所に見られる。あとそうだ、いじめっこのクリスはどっかで見た事あると思っていたが、ロボコップのルイスだった。何となく納得。