口裂け女2 - 寺内康太郎監督

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 夏なのでホラーを観賞。ちなみに前作は見ていないが、どこかのサイトで、前作と直接つながりは無いという感想を観たので信用した。尚この手の題材の映画ってどうしても二時間ドラマの延長の様なちゃっちい印象を持たれがちで、事実そういうものも多いが、本作はなかなかどうして丁寧な作りの良作。ただ、純粋なホラーというよりは人間ドラマに重きが置かれており、「怖がらせてくれる映画」を特に期待していると肩すかしを食うかもしれない。怖いというよりは、悲しい話だった。
 ごく普通の快活な女子高生が、ある事件で負わされた顔の大ケガをきっかけとして不幸と裏切りの螺旋に陥り、絶望の果てに狂気の口裂け女となってしまう。という中々の無茶振りプロットをナチュラルに描くのは当然の様に難題だったと思うが、本作は主人公本人や周りの人間の行動に特に突飛な点は無く、その過程を驚くほど自然に描く事に成功している。さらにそこに、有名な口裂け女の諸要件(三姉妹だった、足が速い、ポマードが苦手、べっこう飴が好き)も違和感なく入れ込んでおり、脚本陣が「とにかく自然な説得力を持たせたい」と奮闘したであろうことが伝わってくる。また、時折挿入される赤い服の女(=前作の口裂け女?)の演出は人によっては反則と感じるかも知れないが、「ホラー的な小道具&主人公が段々闇に取り憑かれていくイメージ」の二つを見事に重ねて表現していて、とてもうまいやり方だと個人的には感心しきり。
 あとそういえば「重ねて表現する」という意味では、「長女が血液を拭き取る場面」など、「見た目には同じ行為がまるで逆の意味合いで反復される」というようなシークエンスが幾つか有った。その辺の凝り具合も、脚本の練られ具合を強く感じさせる。
 勿論細かく観れば色々アラはあるが、それにしても口裂け女という、見ようによっては最早ギャグの様な大枠をよくぞここまで消化・昇華したものだ。
 繰り返しになるが、全体にしっかり出来すぎていてB級ホラーならではのぶっ飛びやパワー感を期待すると肩すかしを食らう。しかし本作が、都市伝説を元にしたB級映画群の中で頭二つほど抜け出た出来であることは間違い無い。

 下の予告編で見れるラストシーンの笑顔は、本編を観た後だと、怖いというよりとても悲しく見えます。


「口裂け女2」予告 - YouTube