Loveless - My Bloody Valentine

 初めて聞いたのは10代の頃で、どんな雑誌やレビューを観てもシューゲイザーの元祖にして至高みたいな事が書かれていて、それでツタヤでレンタルして聞いてみたもののあまりピンと来ず、より分かりやすい爆音を伴ったライドや、逆に、より耽美に振り切ったかのようなスロウダイブの方が良いんじゃないかなどと思っていた。

 それから何年かして、もう何が切っ掛けだったかは忘れたが突然耳が開くというか、本当に本作ばかり聞いていた時期を経て、昨年出たリマスターCD(リマスターは必ずしも良くなっていない場合も多いが、本作は流石ケヴィンというべき改良だった。ちなみにdisc2が好きです)でまた火がつき、たまたまその頃見かけたアナログ(91年発売のオリジナル盤)を勢いで購入したのが下の画像です。

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 ただこの個体は格安だった代わりにノイズや音飛びする箇所が多くいずれ買い替えたいと思っている。が、状態の善し悪しに関わらず、滅多に店に並ばないのが難点。

 ちなみに本作のLPはこのオリジナル盤の他に2003年にplain recordingsというレーベルから再発されたもの(これは見開きジャケットで180g盤)があるのだけど、discogsにて、このplain盤はアメリカでlovelessの権利を持っていたワーナーがバンドに無断で許可を出し、あまつさえオリジナルのテープではなくCDからマスターされたという事でケヴィン・シールズもご立腹、というコメントを見て以来敬遠してしまい、つまりオリジナルに拘って探しているので余計に見かける機会が少なくなっているというわけです。

 もっとも、僕はplainから再発されたmazzy starのレコードを一枚持っており、それもおそらく CDからマスターされているのだろうけど特に何も引っ掛らず聞いていたので、本作も聞き分けれる自信は無い。だから要するに、メンバー、特にケヴィン非公認というのがどうにも引っ掛かっているというそれだけの話ですが、悪しからず。

 当たり前に名曲ばかりが並ぶが、i only said・come in alone ・sometimes・soon辺りがやっぱり好きです。特にcome in aloneは、タイトルそのままの歌い出しの歌詞がジャケットよろしくの桃源郷に直接手を引いて誘ってくれているようで、ついついリピートしてしまう。

 彼我の輪郭が滲んで、曖昧になって、もう世界にも自分にも何一つ期待しないような徹底した諦観の果てにうっすらと見え隠れする涅槃。そういう仏教的というか、東洋思想的な感触が本作にはあると思う。勿論意図したものではないのだろうけど。

 とにかく揺蕩うようなギターの音色が気持ち良く、特に今時期みたいな夏によく似合う。

 内容もジャケットも、そしてLovelessというタイトルも含め奇跡のような作品。棺に入れて欲しい一枚。

 あとは、公式でアナログを再発してくれれば言うことなしなのだが。去年CDのリマスターが出たときに少し期待したんだけど、権利がややこしかったりするのだろうか。


My Bloody Valentine - Come In Alone - YouTube