YOU - ART SCHOOL

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アートスクールはセカンドの頃くらいまではよく聞いていたが、余りに何度も繰り返されるベタベタな退廃趣味、少女性への畏怖や憧憬といった広がりの無い歌詞世界に主に興味を失い、ながらく聞いていなかった。が、先日ふと目に入った本作を何となく試聴して購入。とても良いです。

ジャケットも歌詞もサウンドも90年代にまだまだ囚われているかの様で特に変化も無いが、ここまでやりきっていると一周回って逆に清々しく聞けるという感じだろうか。一時期はエレクトロぽい感じを導入してみたり色々試行錯誤していたようだが、本作に至っては開き直ったかのように、素直に曲を書いていると思う。ともすれば安直と捉えられがちなヴァースコーラスヴァースを相変わらずガンガンに繰り返すが、その事によって改めて浮かび上がる木下理樹という人のメロディセンス。この人はもともと轟音オルタナというよりは、キュアーとかREMみたいなもう少し可愛らしい感じの旋律感が底にあるのではないかとずっと思っていたが、本作ではいよいよその本領が発揮されているように感じる。また、サポートリズム隊の二人も凄い。基本的にパワータイプだが、かなりの緩急自在でシンプルな楽曲を巧みに彩る。特にモーサムのドラムという藤田という人はそのプレイを今作で初めて聞いたが凄く奔放で野性的なイメージ且つ、ここぞ!というところで手数を打ち込んでくるのがたまらなく気持ちよい。あえて挙げるなら昔の中村達也のプレイと似た匂いがある。。ような気がする。

いわゆる「今夜はブギーバック」形式の一曲目はまぁご愛嬌といった感じだけど、全体的に押し付けがましく無いグッドメロディーと90年代踏襲上等!な楽曲、そして相変わらず「手を伸ばす」「触れられない」「飛べない天使」「君はあの時何て言った」様な歌詞達がでも何だろう、、今、改めて胸をうつ。これは多分もう自分が完全にそういう所にいないと実感しているからこそ素直に受け取れるようになったということだろう。年を取った僕を、変わらなかった、変われなかったバンドが、今一度射抜いたということか。

音質というか音色も、全体的に丸っこくて聞きやすいもので非常に良い。これ多分アナログ録音していると思うのだけれど、どうなんだろうか。色々書いたけど、結局この点がリピート再生の一番の要因な気もする。スマパンのメロンコリ(リマスター版ではなくオリジナル!)に近いようなニュアンスもあって、素晴らしい。皆こういう音で録ってくれたら良いのに。