ブルー・ジャスミン - ウディ・アレン監督

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主演のケイト・ブランシェットがアカデミーで主演女優をとった話題作。銀座シネ・スイッチにて鑑賞。ウディ・アレンという人は本当に意地悪だと思う。40年代くらいの軽妙なスウィングに乗せて綴られる物語は滑稽でそれ以上に切実だ。
幾つもの会社を経営する夫と共にNYで裕福な生活を送っていたジャスミンだが、実は夫の事業内容は違法スレスレであり、ある時告発を受け全てを失う。財産どころか莫大な借金さえ抱えてしまったジャスミンは行くあても無く、敬遠していた西海岸の妹のもとを訪ねる。
主人公のジャスミンはまるで漫画の様に極端で分かりやすく虚栄心の塊だがそれこそ日本には、バブル当時ブイブイと踊っていたのであろう現在四十過ぎ位のご婦人の中にこういう人間が本当にいる事を、僕はよく知っている。どこまでも上辺だけを飾りたて、名も変え、自分では何もしていない・できないくせにプライドだけは山のように高く、また彼女にとって男は自分に富や名声、安心を与える代替可能な触媒でしかない。
しかしそんな愚かな彼女を冷笑と共に突き放す事が出来ないのは、「装飾をはぎ取った丸裸の自分など、誰も愛してくれるはずがない」という、本作全編に亘って彼女が逆説的に叫び続けるその声に不本意ながらも共感してしまうからだろうか。


映画『ブルージャスミン』予告編 - YouTube

※以下はオチに触れています。

 
終盤に明かされる「夫の不正を告発し全てを崩壊させたのは他ならぬジャスミン本人だった」という展開も皮肉が効いていて素晴らしく意地悪。空っぽの自分を直視することが出来ず、どこまでも自分本位の自己正当化を崩さず、あまつさえ嘘さえ平気でつき続ける彼女の精神は次第に過去の記憶や情景を現実と混同しだし崩壊していくが、ラストの「ブルームーン、昔は歌詞を覚えていたのに、、、」というセリフと虚ろな表情はまるで闇金ウシジマくんのようなオチで、どうしようもなくやるせない。
「格好付けない、気取らない自分」を日々演出して生きている僕と彼女はやり方が違うだけである意味では同じ穴の狢だ。全く身につまされる、素晴らしい映画だった。