Specter at the Feast - Black Rebel Motorcycle Club

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 11月にめでたく来日が決定したBRMCの最新作。アナログは赤色の透明仕様。

 最高傑作かもしれない。僕が彼らを聞き始めたのは確か2ndが出た直後からで、howl-sessionsamerican-Xなどのアウトテイク集、果ては実験音楽のようなeffect of 333まで全て聞いているが、現時点で今後一番回数を聞くかもしれないと思っている。今作はキャリアの中でも非常に内省的なアルバムで一聴すると地味な曲や展開が多いが、アルバムとしてのまとまりがずば抜けているのと、また曲作りにおいても、彼らが今作で新しい段階に入った事は間違い無い。

 高い地力と造詣の深さで毎回高品質なアルバムを作る彼らではあったが、正直ここ2作ほどはアルバムの構成やその楽曲にマンネリが漂っていた。しかし、こういう大人のなり方があったのだ。

 一曲目ファイアーウォーカーのまるでアンビエントの様な幕明けから、ぶっといベース(相変わらず各サウンドやミックスのバランスなど良いが、今作は特にベースの音色が凄く気持ちよい)がしかしもの悲しく響き、そこにロバートの抑制された歌声が静かに滑り込んでくる様子は何回聞いても鳥肌物。こういうクールで都会的な熱を帯びた雰囲気というのはすっかり電子系の音楽にその役目を奪われた感があるが、彼らは2013年という時代にそれを取り返してしまった。それもボロボロの革ジャンを着たまま。

 また、上に少し書いたが、本作は曲順がかなり変わっていて、一言で言うならアルバムと言うより、まるでマニアックなファン向けのライブのセットリストのような曲順になっている。特に中盤、いつもならもう少しばらけさせるピーター歌唱のシンプルなアンセムを立て続けに並べた後で、今度はオルガン主体でボーカルもリバーブが効きまくったメロウで呪術的なやつをこれまた3曲位連続で並べている。最初聴いた時はかなり違和感があったが、今ではこの曲順しか考えられないほど、このセットには奇妙な反復性がある。基本的にどんなバンドのアルバムでも、特に中盤で似たような曲の連打は避けて配置したがるものだと思うが、そのセオリーの真逆を行っているこのアルバムが何故こんなにも聞きやすいのかはよく分からない。しかしとにかく、明確に意図されたものであることは確実で、しかもそれは完全に成功している。

 バーネット・ニューマンをダメージ加工したようなジャケットも最高に格好良いし、BRMC3rdくらい迄、久しく聞いてないというような人にも、是非改めて聞いてみて欲しいアルバム。柔らかく悲しげで、でも全体的な感触はあくまでも鋭い。

 とにかく11月の来日が本当に楽しみ。などとブログに書いているのは死亡フラグみたいだけど。


Black Rebel Motorcycle Club - Fire Walker