スプリング・ブレイカーズ - ハーモニー・コリン監督

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 ハーモニー・コリン監督作を初観賞。蛍光色のビキニに下は短パンというださいスタイルに、だらけた姿態を奔放にさらけだすチラシのビジュアルが最高過ぎて、家ではチラシを飾り、出先では携帯の待ち受けにする程気に入っており、それだけでも結構満足していたが、そこまでお世話になっている礼儀としていよいよ観に行った。

 上映館は渋谷のシネマライズで久し振りに行ったが、火曜日千円だとか高校生はいつでも千円だとか今作でいうとネオンカラー割引だとか色々施策を練っていて、シネコンに比べると飲食物も安かった。そういう姿勢には大変に共感するのだが、やっぱりここは致命的に見辛い。使っているのを観たことはないが、ここは館の奥行きの無さの割に二階席があり、そのため通常使用されている一階席から観賞するとスクリーンの位置が妙に高く、どこに座っても結構見上げる形で見る事になる。そもそも映画館って通常はスクリーンに近くなるほど座席が低くなっていくが、ここは逆で、最前列が一番高い位置にあり、以下段々と低くなっていく。

 要するに全体として、>□(□がスクリーンで、>は上辺が二階席、下辺が一階席)のような形状になっている。

 縦に長い部屋を映画館にしようとしたとき収容人数の効率を考えるとこうなるのは分かるが、それにしてもどうにかならなかったのかと毎回思う。利用したことは無いがおそらく二階席から観ると今度は結構見下ろす形になり、どちらにしても中途半端なのではないか。
 閑話休題。全編に渡って早いカット割りと鮮やかな色彩、本編と直接関係の無いイメージが頻繁に挿入されたり(主に沸き立つビーチの映像。しかし「頻繁に挿入」ってあれだな)、あとはスローモーションの多用など、正にMVのような映像で構成されている。


映画『スプリング・ブレイカーズ』予告編 - YouTube

※以下、結末に触れています

  主人公4人が時間と退屈を持て余す映画の開始から、麻薬で留置所にぶち込まれてエイリアンに保釈されるくらいまでは最高だった。ビーチ、ケツ、チチ、音楽、酒、ドラッグ。天国か地獄か分からないフロリダの快楽が、4人のビッチどもを中心としてスクリーンにこれでもかと映し出される。

 しかしそれ以降は急速に、退屈で空虚な日常から逃げ出すためなら破滅も厭わないというようなデカダンな物語性に作品が傾斜していき、単なる馬鹿馬鹿しさはどんどん薄れ、結局シリアスな雰囲気になっていってしまう。勿論例えばピラニアほどバカ一直線な作品だと思っていたわけでも、またそれをやって欲しかったわけでもないし、保釈を端緒として結局はギャング同士の抗争に巻き込まれていくというお決まりの展開自体は紋切だがとても良い。ただもう少し開き直ったような明るいテンションで最後まで突っ走って欲しかった。更に言うなら、あくまでも4人組がビジュアルもキャラも最高だったので、一人抜け二人抜け、最終的には金髪2人になるというのも寂しい。脚本上の意図として、「どんなパーティにもいつかは終わりが来るし、友情も約束も、永遠のものなど何も無い」というメッセージは確かにしんみりと感じたが、それにしても最後の銃撃戦はやっぱり4人でやって欲しかった。戦闘開始直後に当事者であるエイリアンが呆気無く死んでしまっても、なお襲撃をやめないほどの焦燥や諦観を抱えたまま最後まで突っ走るという刹那的な展開が良かっただけに尚更そう思う。

 そう、せめて4人のチームだけは永遠にそこで凍結され、そのまま終わっていって欲しいと僕は思っていたのかも知れない。そう考えるとこのエンドもなかなか情緒的だが、最後4人がやっぱり笑い合いながらバンバン銃を撃って、そこにお気楽なパーティチューンでも流して終わった方がカタルシスは大きく、また逆説的に悲しみも味わい深かった気がするので、ここはやっぱりそうして欲しかった。
 しかしそれにしても4人ともそれぞれに違った表情を持っており、適度にムチムチで本当に可愛かった。ダイナーの前で溜まってる所や、水着で拘留されてるシーンは撮り方も含め特に素晴らしい。監督はこの映画のためにわざと少し太らせたりしたらしいけど、そのあたり流石によく分かっておられる。特に監督の奥さんというピンク髪のコがたまらない。監督が凄く羨ましい。
 若くて派手で享楽的で、そして全てがいつかは終わる事と、それを知っている事。暗い青春・魔の退屈という本のタイトルを思い出すような、切ない映画だった。

 水際の映像というのはどんな撮り方をされていても、何かしら終わりの気配がある。