八本脚の蝶 - 二階堂奥歯

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穂村弘さんがどこかで紹介していたのを何の気なしに図書館で借りて今半分位まで読んだところだけど、凄い。圧倒的な読書量から来る膨大な知識を下地として、哲学、文学、絵画、服飾などに纏わる広大なイメージの森を縦横無尽に飛び回る、幻の蝶。想像力と洞察の深さに加えそれを過不足なく表現する文章力と、そこかしこに顔を覗かすチャーミングなユーモア。渋沢龍彦とか菊地成孔を初めて知った時のような衝撃。

ああでももう、あと半年分ほどの所まで読んでしまった。ここから先はきっと読むのがきつくなってくるんだろう。

どこか遠くの深い森、湖のほとり、古城の一室、寺社の境内。距離や時間を超えたあらゆる場所で、人形や邪神や絵画やコスメや香水やドレスで組まれた美しい魔法陣を、膨大な物語から抽出した呪文を駆使し踊るように操る彼女の姿を想像する。若き司祭は様々なものをそこから召喚し、遊び、そして最後には自分自身向こう側に消えてしまう。

後には一冊の本が残される。此岸に残された、物語の手がかり。