ボール - ヴァロットン

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日曜美術館で取り上げられていたヴァロットンという画家の諸作が非常に良さそうで、展覧会に行きたい。もとはスイスの人らしいけど、欧州でも長く埋もれていて再評価されて広く知られる様になったのはここ最近のことらしい。(ただ番組によると、澁澤龍彦は生前の著作の中ですでに紹介していたそうだ。流石としか言いようがない)

暗めの色調と少ない色数でもってベタっとした質感でまとめられた作品が多く、華やかさや明快さはほぼ感じられない。しかしその抑制された作品世界の静けさには心地よさと、どこか後ろ暗い様な不穏な気配が同居していて、その奇妙なバランスに何とも惹き付けられものがある。

なお番組には角田光代も出ていて上の絵を題材に短編を発表していたのだけれど、それも大体そんなようなニュアンスの作品で良かった。うつくしさや特別な親密さというものは、秘密を芯としていなければならないということ。うつくしさ、という言葉を平仮名にしているのも何だかとても納得した。これはちなみに今現在開催されている展覧会のHPで読めるそうだ。

それにしても、久しぶりに知らない画家の特集をじっくり見たけど、やっぱり絵画は凄い。一瞬一撃で受け手の感性を貫く静寂の切れ味。距離や時間に全くもって囚われないこの全能感に心地よく浸される時、どうしても音楽や映画や文学をじれったく、あるいは断片的に過ぎると感じてしまう事がある。

http://mimt.jp/vallotton/top.php