BRMC at 恵比寿リキッドルーム(2013.11.25)

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橫浜の時は知らなかったのだがサイン会があったらしいとの噂を聞きつけ、公式サイトなどを見て回ると、フェイスブックに詳細がアップされていた。先着50名との事で、何となく有給を取得しておいて本当に良かったと安堵する。サインは当然レコードにして貰おうと思ったが、12インチのレコードが会場であるリキッドルームのロッカーに入らない場合、ずっと手に持ってライブを観るのはごめんなので、早速検索してロッカーの寸法を確かめる。幸い丁度収まるサイズで、specterのレコードにサインして貰う事に決めた。ちなみに入らない場合はain’t no easy way7インチを持っていこうと思っていた。

当日はいつ雨が降ってもおかしくないような曇り空で、サイン会の整理券配布は17:15とのことだったが先着50名という制限が不安で、余裕をみて一時間前には到着した。しかしやはり杞憂だったようで2Fのロビーにはその時点で20名ほどが屯しているだけだった。コアなファンと言うべきか、流石に革ジャンやら黒色率が高い。取り敢えずバーカウンターで酒を求めようと思ったが、カウンターにはまだ誰もいなかった。

しかしこのサイン会待ちをする会場がリキッドで良かった。ここの二階は広めのロビーにソファも結構あるし、バーカウンターからロッカーやトイレ、ひいてはカフェまで一通りの設備が備わり完結しているので客にとってはかなり有難い環境で時間を潰せる。

ソファでしばらくボーッとしていたらやがてスタッフがサイン会待ちの列を作ると宣言し、ほぼ同時にバーカウンターも営業を開始したようだった。皆が立ちあがって並んでいく。しかしギリギリまで座っていたかった僕は狡猾にも列の前方から人数を数え、50名まではまだ余裕があることを確認すると、その日最初の客となるべくバーカウンターに向かった。開店したばかりで余裕があったのだろう、ラムコークを頼むと、ドリンク係の女子は幾つかの瓶を取り出しどのラム酒にするかわざわざ聞いてくれた。ライブハウスでこういう事は珍しい。全然詳しくはなかったがどこかで目にした事のあったキャプテンなんたらという船長のイラストがラベルに描かれたものを頼み、受取ってソファに戻る。

しばらくして、列が大体四十数名になったのを見計らってようやく列に加わった。僕のすぐ後ろには白人女性が並んでいたが、サインの列が進んで僕がレコードジャケットを取り出したとき、彼女がビューティフルと反応してくれたのが嬉しかった。わざわざ大きなレコードをユニオンの袋に入れて持参したのが報われる思い。レコードは大抵の鞄に入らないので、運搬時はそれだけを手に持たねばならない。

サイン会は二階から階段を下る形で列を作り、1Fのエントランスでサインをして貰い、終わった人はまた階段を上がってロビーに戻るという導線で行われた。僕はかなり後ろの方だったので思い思いのアイテムにサインを貰い高揚して階段を上がってくる人たちを沢山観たが、この「未」の人と「済」の人が、肝心の主役は見えない環境で擦れ違うというのは何とも言えない、サイン会独特の高揚だろう。殆どの人はCDやレコードだったが中にはヘルメットにサインして貰っている人もいた。尚、僕はspecterのジャケットデザインが非常に好きで、例え本人達のサインといえどもそこに書き込みが入るのは嫌だったため最初から内側に書いて貰おうと思っていたのだが、観ていると皆結構ジャケットの前面にばーんと書いて貰っているようで、これは結構意外だった。

列が進んでいよいよ自分の番になる。リアはおらず、ピーターとロバートの二人が座っている。あなたに憧れて同じギターを買いましたとかそれ位は言おうと思っていたのに、いざ本人を目の前にすると案の定緊張して何も言えず、もっぱらアイラブユーとサンキューを繰り返す無能を晒した。間近で観る二人は思っていた以上に落ち着いた雰囲気と穏やかな口調で、僕のたどたどしい英語に応えてくれ、握手し、さらさらっとサインを書いてくれた。ロブに至っては何やら向こうから話し掛けてくれたが、緊張状態にある僕にそのリスニングが出来るわけもなく、ただただイヤーイヤ―サンキューアイラブユーと繰り返していた。ただ、その時点で前述の白人女性はピーターとネイティブな英会話をしており、その内容が「salvationという曲が私の人生を救ってくれて云々」というものであったことは何故か印象に残っている。集中力というのはたまに妙な方向に作用する。

ジャケット内側に貰った二人のサインはこれも緊張のせいだろう、貰った直後の時点で既にどちらがどちらのサインか分からなくなっていたが、僕はとても満足して、ニヤニヤしたままバーカウンターに向かい二杯目のラムコークを注文した。どうでもよいが僕はビールや純粋なハードリカーはつまみの食べ物がないときついタチなので、ライブハウスではこういうソフトドリンクでの割り物を頼む事が多い。どうせ腰を据えて飲むような場所でもないので、丁度良いとも思う。

酒を受け取ってロッカーに荷物と上着を入れる。物販でCDを担当していたお姉さんが綺麗だったので真向かいのソファに座って時々眺めながら開場を待った。

割と若い整理番号だったのでまだ人が少ない内に入場、一階でもドリンクカウンターに寄って貰ったばかりのドリンク券を即使用しつつ、橫浜ではピーター側に陣取ったので、今度はロバートの前三列目くらいで開演を待つ。やがてほぼ時間きっかりにライブが始まった。

セットリストは橫浜と5曲位違った。この日は明らかにロバートの声のモニターが小さい場面があった事や、僕の周りにいた暴れる曲だけえらい暴れて後は仲間内で大声で喋ってはしゃいでいるバカ共の存在を除けば、この日も当然の様に素晴らしいライブだった。ライブで初めて聞いたUSガバメントやアコースティックでのマーシー、スプレッドユアラブの終わりのリフ追加バージョンなんかは特に興奮した。ロバートが何度も、何かを掴むように左手を突き出していたのがえらく格好良かった。

終演後は二階に戻ってまた酒を買い、開演前と同じく物販前のソファで休憩していた。前回の来日時は終演後暫くしてからこの二階で、ロバートがアコギ弾き語りを始めて大変盛り上がったという事があったので、ひょっとして今回もと待っていた。しかしその様子は無くしばらくすると多分同じ事を考えて残っていたであろう他の客も大分減り、物販も店じまいをはじめて閑散としてきたのでこれはもう無いと判断して、ロッカーから荷物を出し、出口に向けて階段を下りる。

すると入口付近がやや騒がしい。近づくと何とロバートがリキッドの入口付近に出て来ていて、小雨に濡れながらファンとの写真撮影に応じていた。幾らか飲んだ酒のお陰で多少気が大きくなっていた僕はすかさず生じたタイミングを逃さず声を掛け、拙い英語で撮影を願う。カメラマンは周りにいた知らない人に頼んだ。肩を組んで撮影後、ロバートは最後にグッと僕をハグしてくれ、建物内に戻っていった。バンドを組んで、格好良い曲を作って、世界中をツアーして、、、そういう風に生きている人にグッと抱きしめて貰う事で、その時着ていた革ジャン、まだまだ綺麗な僕の革ジャンに今後良い味がでていく様な気がした。

雨が降る駅までの道を、またパーカのフードを被って歩いた。今度はニヤニヤが止まらない顔を隠すためだ。BRMCのファースト日本盤の帯には「激情と刹那を抱えた物だけが入会を許されるクラブに君も入らないか?」というかなり面白いコピーが付けられていたが、正にメンバー直々にそれを許されたような、満ち足りた気分だった。